イギリスの産業については、以前見ましたね。

今回はイギリスの農業について、見ていきましょう。
イギリスの農業の基本情報
- イギリス国土の7割が農地になっています。
- 農地の6割が牧草地、3割が耕地です。
- ヨーロッパの中では大規模な農業が展開されており、
1農業経営体あたり80haの農業が行われています。
(チェコに次いで2番目に広い) - イギリスの中では、農業のGDPは小さく2015年時点でGDPの0.51%しかありません。
- ヨーロッパで最も農家率が小さい国として知られていて、1.4%しかありません。
- 近年のイギリス農業の経営体の数は横ばいで推移しており、22万経営体で推移。
- イングランドの南西部が穀倉地帯になっています。
- スコットランド・ウェールズが肉牛や羊の畜産が盛んです。
- 北アイルランドでは酪農が盛んです。
- EUに加入していた頃は、
小麦は3位、生乳は3位、牛肉は3位、鶏肉は2位、羊肉は1位となっています。
イギリスの農業政策
1973年、イギリスはEECに加盟しました。
その後は欧州共通農業政策が展開されました。
- イングランド
- スコットランド
- ウェールズ
- 北アイルランド
の4ヶ国それぞれで独自に農業政策は運営なされていますが、ほとんど違いはないとされています。
イギリスの農業政策の骨子
イギリスは自由主義国なので、農業も保護政策を行わず、農業経営体の競争を促進する農業が展開されています。
イギリスの農業政策の骨子は
- 競争力のある農業政策
- 環境保護を促進する農業政策
の2本柱となっています。
具体的に見ていきましょう。
農業競争促進政策
農業経営体の規模に関わらず、助成額の上限なしの助成を行っています。
さらに、EU諸国では生産量に連動した助成金が出ますが、イギリスではスコットランドの一部を除いて、それらは出ません。
農業環境保全政策
イギリスは農業の環境支払いの比率が高い国として知られています。
- 生物生息地の保全政策
- 農村の景観保全政策
- 動物福祉の向上をもたらす政策
など
を行っています。
EU離脱の余波
イギリスは2016年、EUからの離脱を一方的に他の加盟国に宣言しました。
その結果として、
- 欧州農業共通政策からの見直し
- 東欧の安い季節労働者の確保の困難
などの問題が起こっています。
環境的土地管理事業(ELM)
イギリスではEU離脱後、
政府が助成する農作業の対象を、
- 環境保全
- 動物福祉
の2点に絞る農業政策を導入しました。
CAP制度である
農地の1ヘクタールあたりの
助成金約4万円の
直接支払制度は
徐々に削減します。
2027年には、
イギリスでは直接支払制度は全廃されます。
以前は口を開けば、
助成金が降ってきましたが、
公的な助成金を受けるためには、
ノルマを達成しなければいけません。
それが、
ELM事業(Environmental Land Management scheme)です。
日本語では環境土地管理事業と訳されています。
ELM事業は2024年から実施されます。
ELM事業は
旧来の環境支払いのスキームの
代替わりのほか、
ランドスケープ再生事業(LR事業)が
特徴的です。
LRはLandscape Recoveryの略です。
これは圃場の縁を耕さないことなどを条件にするようなもので、
- 絶滅危惧種の保全活動
- 河川の堰などの改修
などを条件にするもので、
炭素を出さない農業や、
地域のコミュニティからの参加協力
なども条件になっています。
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