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EUの共通農業政策(CAP)とCAP改革

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欧州連合(EU)の欧州27カ国の地域統合体である。

EUには、CAP(Common Agricultural Policy)と呼ばれる共通農業政策が実施されています。

CAPはすべてのEU加盟国に義務付けた共通の基本的農業政策です。
EU各国の農業法よりもこの政策が優先されます。

 

CAP政策の歴史

CAPはEEC時代の
1957年のEEC設立条約の締結の際に、盛り込まれたものです。

 

1962年以降、生産作物ごとの品目別による共通市場機構(Common organisation of agricultural markets (CMO))が設置されました。CMOは各国に段階的に導入されていきました。

各国政府の市場介入により、品目別の市場の域内価格は支えられていきました。

 

さらに、EECはEEC域外からの輸入農産物には輸入課徴金をかけ、
EEC域外への輸出農産物には輸出補助金によるダンピング政策を行いました。

この農業政策の結果、EECにはアメリカからの安い農産物があまり入って来づらかったのです。

1967年にはEEC共通の政策価格が決定されました。
それまでは各国バラバラの価格でしたが、加盟国間では農産物価格を品目ごとに統一されました。

 

こうした農業保護政策は、EEC加盟国間の農産物の供給過剰をもたらし、農産物の市場価格の低下圧力が強くなりました。

  • 市場介入
  • 政府による農産物の直接購入
  • 政府主導の貯蔵
  • 輸出補助金の増額

などが行われました。

 

そして、アメリカとの貿易摩擦も発生し、アメリカからの圧力も上がってきた。

 

1980年代末までの生産過剰対策がなされたが、一向に改善せず、

  • 飼料向け小麦価格の値下げ
  • 輸入穀物価格の引き上げ

を行いました。

1976年頃に導入されたサイロシステムにより、
関税率がゼロのものや、低関税の農産物の輸入増を招きました。

生産過剰であるにも関わらず、輸入増により、ますます供給過剰という状況になりました。

1982年頃に、保証限度数量制という生産制限を実施しました。
1986年頃に、共同責任課徴金制度、介入・買入の制限。

さらに、1988年頃には、この上記の2つの政策を盛り込んだ
スタビライザー制度が確立されました。

生乳生産割当(1984年)などの生産調整が行われました。

CAP改革

1992年に最初の「CAP改革」が行われました。

  • 穀物価格
  • 牛肉価格

の引き下げが決定されました。

その価格が下がった分については、
農業収入の減少を直接支払制度で補填しました。

直接支払制度の受給要件として、

  • 飼料向け需要の拡大
  • 生産調整
  • 農産物を増産しても
    直接支払が増加しない仕組み(デカップリング)

が導入されました。

これらのCAP改革により、生産過剰が抑制されていきました。

また、市場価格が下がったため、競争力が向上しました。
そのため、関税引き下げも可能となりました。
また、輸出補助金も引き下げることができるようになりました。

直接支払を当面削減不要なものとして、
アメリカとの間でGATTウルグアイ・ラウンドは妥結しました。

これを「青の政策」ともいいます。

 

単一支払い制度

CAP改革はその後も継続し、EU中期財政政策(MFF)とも並立して行われました。

2003年改革では、
直接支払制度をWTO(世界貿易機関)農業協定で削減不要な「緑の政策」にするために、品目ごとではない受給額実績に基づく「単一支払い制度」を導入しました。(今までは品目ごと)

これを生産のデカップリング制度といいます。

ヘルスチェック制度

2008年にヘルスチェックと呼ばれる政策が導入されます。

ほぼすべての品目で直接支払制度が導入され、単一支払い制度が導入されました。

2013年改革

  • 直接支払制度の過去実績が原則廃止

→単位面積当たりの直接支払額が
EU加盟各国間や農業経営規模の大小で格差が縮小され、
また、目的別達成度に基づく直接支払制度が導入され、
財源の再配分が実現しました。

生産調整の廃止

2007年以降、中国をはじめとするアジア各国の成長に伴う、市場価格の上昇により、EUの農産物は輸出競争力を取り戻しました。

  • 穀物
  • 乳製品
  • 砂糖
  • ワイン

は生産調整を廃止しました。

CAP政策の2本柱

第1の柱

CAP政策の第1の柱は、

  • 市場政策
  • 直接支払制度

の経済的政策です。

第2の柱

EU加盟国が施策を選択できるようになっています。

農業振興政策として束ねられています。

第2の柱は、
農村振興プログラムをEU加盟各国が策定し、
財源の一部をEU財政とは別に負担するのが特徴です。

選択的助成制度

  • 農業構造政策
  • 条件不利地域助成制度
  • 農業環境保護制度
  • 非農業部門への経営多角化促進制度
  • 畜産衛生促進制度
  • 動物福祉促進制度
  • LEADER(現地民立案による振興計画)
  • 村落の改善政策
  • 村落の開発政策
  • 地域の農業遺産の保護政策

などを、国などが選択的に取り組むことになりました。

1999年の農業改革以降、
農業の多面的機能の部分に着目し、
補助金を受給するための要件として、環境保護要件を厳しくしている。

また、近年加盟した東欧諸国に関しては、
西欧諸国からの財政移転効果もあると言われており、
西欧と東欧の利害調整が必要だと言われている。

 

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